麻生太郎氏また舌禍..女性ばかりに「期待」する自民党政治家たち 少子化問題 今何が求められているか

2023年1月24日 12時00分

自民党の麻生太郞氏

 「少子化の最大の原因は晩婚化」。先日、自民党の麻生太郎副総裁の発言が一部で報じられ、「理解不足」「女性への責任転嫁」といった批判の声が上がった。岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を掲げ、通常国会での論戦を間近に控えても響かない、旧態依然の政治家がいる表れか。岸田首相にしても、ここに来てキーワードを言い換え。足元が定まらない中、大胆な対策をやりきれるのか。(岸本拓也、中沢佳子)

◆実際は晩婚化?非婚化の影響とは別の「主因」が存在

 麻生氏の発言は今月15日、福岡県内で開かれた講演会で飛び出した。
 テレビ朝日の報道によると、麻生氏は少子化について「一番、大きな理由は出産する時の女性の年齢が高齢化しているからです」と断言。女性の初婚年齢が「今は30歳で普通」と述べた上で、子どもを複数出産するには「体力的な問題があるのかもしれない」と指摘したという。
 少子化は女性の問題ととらえられかねない発言を巡り、SNS上では、「なんでも責任は女性ですか」「政治家の責任を国民に転嫁している」などと、批判や反論が相次いだ。
 では、本当に晩婚化が少子化の最大の理由なのか。内閣府が2020年にまとめた資料によると、日本人女性の平均初婚年齢は29.4歳。しかし、日本より出生率が高い英国(31.5歳)やフランス(32.8歳)、スウェーデン(34.0歳)などは、軒並み日本より「晩婚」だった。
 人口問題に詳しい日本総研の藤波匠氏は「05年ごろまでは婚姻率の低下が出生数を押し下げる主因だった。しかし、結婚しても子どもを持たない人が増え、16年以降はむしろ出生数の低下を加速させている。晩婚化?非婚化が少子化に与える影響は小さくなっている」と指摘する。
 若い世代が出産をためらうのは経済的理由からだ。内閣府の22年版「少子化社会対策白書」では、夫婦が理想の子どもの数を持てない理由として「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が56.3%と最多だった。藤波氏は「現金給付だけでなく、若い世代の賃金引き上げや雇用の安定化、非正規雇用の正規化にしっかり取り組み、『日本で子どもを産み育てたい』と思える社会を目指すことが重要だ」と訴える。

◆「女性は産む機械」とまで…根底にある意識とは

通常国会が召集され、衆院本会議に臨む岸田首相(右)ら=国会で

 日本の出生数は第2次ベビーブームの1973年の約209万人からほぼ右肩下がりで減り、2021年は約81万人に。22年には80万人を割り込む見通しだ。少子化は社会全体の課題のはずだが、麻生氏以外にも、女性ばかりに「期待」する自民党政治家の問題発言が近年も目立つ。
 「お子さんやお孫さんにぜひ、子どもを最低3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」(桜田義孝元五輪相)、「子どもを4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰しては」(山東昭子前参院議長)、「結婚を機にママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれればいいなと思う。たくさん産んでください」(菅義偉前首相)などだ。07年にも当時の柳沢伯夫厚労相の「女性は産む機械」発言が批判された。
 なぜこうした発言が繰り返されるのか。政治アナリストの伊藤惇夫氏は「根底には、家庭を美化し、女性は子どもを産んで育てるのが当然という保守系政治家の意識がある。戦前の『産めよ 増やせよ』の感覚が抜けきっていない」と指摘する。「その結果、非正規の低所得層の増加や高い住宅コストの問題といった少子化の構造的な課題に向き合った対策をきちんと取ってこなかったのでは。それが今の事態を招いている」

◆「出産育児一時金の増額」は十分か?

 岸田首相には、与党政治家の間に根付く保守性を打ち破るような気概が問われる。だが、今のところ少子化対策の全体像は曖昧。具体化している数少ない策としては、子どもを産んだ人に支給する「出産育児一時金」の増額が挙げられる。
 4月から、現行の42万円を50万円に引き上げる。1994年に30万円の支給で制度を創設して以来、最大の上げ幅だ。
 ただし、永続的な改善策とは言い難い。
 厚生労働省によると、公的病院での正常分娩ぶんべんの全国平均額は2021年度45万5000円。50万円に支給を上げればまかなえる計算だ。しかし、地域差があり、21年度時点で東京都の平均額は56万5000円。茨城県や神奈川県も50万円を超えている。
 また、全国平均額は12年度は40万6000円だった。おおむね年1%の増加率で、同様のペースで上昇すれば、遠くないうちに支給額を超える。
 一時金は、健康保険組合や国民健康保険などの保険料が主な原資になっている。増額に伴い、政府は一時金全体の7%ほどを後期高齢者医療制度の費用の一部から充てる方針だ。
 正常分娩でも病気やけがと同じように、公的医療保険の適用対象にすべきだという意見もある。そうなれば大胆な転換だが、昨年6月の参院予算委員会で岸田首相は「慎重に考えなければ」と答弁している。

◆「全世代で子育てを支える意識を」

 結局、財源をかき集めた末のばらまきにも見える。岸田首相は最大で2兆?3兆円が必要とされる児童手当の拡充も掲げる。こちらも現金給付だが、財源の議論は先送りしている。
 「子育て世代の可処分所得を増やすことが鍵。若い世代への投資をどう実現するかが問われている」。日本大学の末冨芳教授(教育行政学)も先の藤波氏と同様に「『子どもを産んだ方が得』と思わせる施策が必要だ」と強調する。
 そのため「介護や高齢者対応に偏った社会保障の見直しは欠かせない。企業も含めて全世代で子育てを支える意識を持たなくては」と抜本的な変革を求める。
 出産支援についても、一時金の増額だけでなく「妊娠時の健診から出産までの無償化や、安心して子育てできる住宅への入居支援も考えられる」と幅広い施策を提案する。
 中央大の山田昌弘教授(家族社会学)は「これまでの少子化対策は、正社員の共働き夫婦を想定してきたが、育児世代は多様化し、格差も開いている。低収入世帯とパワーカップル世帯で求める対策は違う。保育所の整備や育児休業の取得促進が全ての人に沿うわけではない」と指摘する。
 収入を理由に結婚や出産をあきらめる人の存在を念頭に「あらゆる立場の人が実情に応じて利用できる多種多様な支援策を整えるべきだ」と訴える山田氏。麻生氏の発言も引っかかる。「非正規で働かざるを得ない人や貧困にあえいでいる人が周りにいないか、目に入っていないのだろう」

◆首相の少子化対策 現状では「同次元」

衆院本会議で施政方針演説を前にマスクを外す岸田首相=国会で

 首相は23日に召集された通常国会の施政方針演説で、少子化対策の表現を「異次元」から「次元の異なる」と言い換えた。
 「現金の支給額を増やすだけなら、これまでの延長線上で『次元』は同じ。現時点で思い切った案が出ていない」。山田氏は多少表現を変えようと、「同次元」の範疇はんちゅうだと切り捨てる。
 「日本は家族主義が浸透し、家庭が全て担う意識が根付いている。教育費の家計負担が重いのもそのためだ」としたうえで、社会の担い手喪失の危機に警鐘を鳴らす。「社会全体で次世代を育てる意識が欠かせない。高等教育の無償化など、長い目線を持った手を打たなければ。本気で取り組むなら、公共事業を削って子育て事業に振り向ける予算の組み替えも必要。そうでなければ、対策は絵に描いた餅に終わる」

◆デスクメモ

 「まん延防止等重点措置」の略称「まん防」は魚のマンボウを想像し、緊張感に欠けるとして使われなくなり「重点措置」などになった。今回の「異次元」と「次元の異なる」は違いがよく分からない。キャッチフレーズなら簡単に変えられないはず。中身も名称も練ってなかった?(北)
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